たそがれ清兵衛

toshiroh2004-03-05

アカデミー賞にノミネートされてから、俄然有名になった映画だけど、それで私が映画館まで足を運ぶかどうかは別として、ノミネートされていなくても金曜ロードショーでやったから見る機会を得たというと実も蓋もないが、笑。
きれいな映画だったなぁ〜。剣客商売みたいなCG合成の昔の風景でなく、まだ日本にもこんな風景が残っているんだなぁ〜と。それに、食べ物、衣服も考証して丁寧に描写。でも、きちんと、これは時代劇という様式美を外れていないというか。
小林念待、大杉蓮をはじめ、ちょっといつもとは違う役回りで、でもやっぱり、この役者さんと思わせるのは山田洋次らしい。
とにかく、四季の花、子供の成長ってのが、清兵衛の生き甲斐になっているのが、最初からよくわかった。でも、最後の岸恵子の独白は当たっているだろうか。それは娘から見た理想の父親であって、同じ男としては腑に落ちない、苦笑。

そういうのを淡々と描いたこの映画。これが日本人礼賛とか再発見とか、ましてや清貧のすすめであるとは、ぜんぜん思えないのだ。

真田広之も真剣を持つとちょっとは時代劇っぽい顔になったが、やはり仕掛ける相手と話し込むところは清兵衛に徹する。しかし、宮沢りえが出てくると、家の中は明るくなるし、演技力はこっちのほうが上?華があるというか。で、生死をかける清兵衛の唯一の真情の吐露ともいえる、宮沢りえへの語りかけは、映画の見せ場だったろうし、それを思えば、絶対清貧なんてもんでなく、フジテレビの大奥に匹敵する内面の葛藤と時代考証が取り持つ映画なのだろう(なんのこっちゃ?)。

やはり、出世を願うだけの病床の妻との死別。母親の痴呆、師範代までになった剣術を生かせない境遇。どれをとっても、不本意であったわけだろうし。
それを受け入れざるを得なかったわけで。それは清兵衛の性格とか受けた教育のせいであろうし。藩命である刺客を断れなかったのも、それは清兵衛が凡人であったからであろうし。
その凡人を時代考証しながら淡々と描くところに、この映画の凄みがあるわけだが。

でも、世の中仕方のないことはあるんだよって、官軍の弾に倒れた時の清兵衛の気持ちもわかるような気もする、そんな年齢におれもなってしまったってことか、苦笑。

映画評1:http://members.jcom.home.ne.jp/cinemacafe/Vol/vol076-100/vol084.htm
映画評2:http://www005.upp.so-net.ne.jp/shigas/HOMPG613.HTM