“色をごまかす技術”の活かしどころ

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0708/mobile254.htm

ご存じのようにテレビ放送やDVD映像は(日本の場合)NTSCという規格に沿ったフォーマットで作られている。ところが、NTSCで規定されている色再現範囲はブラウン管で再現できる色範囲を元に決まっているため、コンピュータ用モニタが扱うsRGB(もしくはそれに近い)モニタにそのまま映すと、とっても地味な色になってしまう(コンピュータ用のCRTは、テレビ用とは色再現域が違う)。
特に液晶パネルは、カラーフィルターの改良で色再現域が改良されてきたとは言え、NTSC色再現域の70%をちょっと越える程度。もっとも良いもので、sRGBを多少上回るぐらいだ。そこでNTSCの映像を再現域の狭い液晶パネルでもきれいに見えるように、色空間の変換が行なわれる。
実はこの部分で、メーカーごとの味付けがかなりされている。たとえばVAIO type Vは、クールな明るい白とやや赤みがさした濃い肌色が特徴だが、同様の絵作りはWEGAシリーズでも行なわれている。
こうした絵作りで難しいのは、絵を作りすぎて特定の色域で破綻をきたさないかということだ。それにより狭い色再現域の表示装置で映像本来の色を失わず、なおかつ高濃度・高彩度領域でサチらないようにするか。といったあたりだろう。単純に狭い色再現域に絶対的な色域を符合させる色空間変換を行なうと、表現できない色の周辺で階調が失われ、立体感のないベッタリとした絵になってしまう。
見栄えの良い色と立体感を失わないためには、ノンリニアに色を再配置する処理を行なう必要がある。その再配置処理の手法が、各社の絵作りの違いを生み出している。実際には映像信号に含まれている色情報とは異なるわけだが、ユーザーは映像信号に含まれている色を忠実に再現することを望んでいるのか? というと、たいていはそうではない。パッと見てきれいであればそれでいい、人間の感覚をだますような絵作りも含めて製品の性能というわけだ。
(中略)
この話。なんとなくプリンタに似ているなぁ。そう思った人もいるのではないだろうか? 実はカラーインクジェットプリンタの絵作りと、フラットパネルテレビ(固定画素テレビ)の絵作りは、技術的にはかなり似ている。